消費と投資のバランス

消費と投資のバランス

具体的にお金はどのように使われるのかについて説明したいと思います。

また「貯蓄=投資」というマクロ経済における重要な概念についても解説していきます。

人は稼いだお金の一定割合を消費する

企業は銀行からお金を借りて設備投資をするケースが多くなっています。

銀行融資の資金源になっているのが、個人の貯蓄です。

 

人はお金を稼ぐと、その何割かを消費して、残りを貯金します。

年収が多い人はたくさん貯蓄できますが、年収が少ない人は必要な支出でほとんどの収入を使い果たしているかもしれません。

人によって環境は異なるわけですが、経済全体で見れば、人は稼いだお金の何割かは貯金しているはずです。

 

経済学の世界でも基本的には同じように考えます。

人はお金を受け取ると、その一部を消費に回します。消費されなかった残りのお金のことを貯蓄と呼びます。

 

貯蓄の多くは銀行預金となっていますが、わたしたちが銀行に預けたお金は、

ずっと銀行の中に眠っているのでしょうか。そうではありません。

銀行は金利を稼ぐビジネスですから、預金者から預かったお金を遊ばせておくことはしません。

預金されたお金は、融資などの形を通じて企業に提供され、設備投資に使われているのです。

 

銀行は、預金者が預金を引き出すことを望んだ場合には、それに応じる義務がありますから、

契約上、預けたお金は存在しています。

 

しかし物理的には、預けたお金はもはや存在しておらず、店舗や工場などへの投資に回されています。

貯蓄されたお金は最終的にすべて投資に回される

株式などに資金を投じた場合でも基本は同じです。

誰がそのお金を受け取り、どこからのタイミングで銀行預金を行いますから、

最終的には何らかの形で銀行に集められることになります。

 

つまり、経済全体で見た場合、個人が消費せずに貯蓄したお金は、

すべて投資に回っているとみなすことができます。

 

経済学では、貯蓄=投資になるという話がよく出てくるのですが、

それは、消費の残りが貯蓄され、投資に回っているからです。

 

貯蓄と投資が等しくなるというのは、経済学では非常に重要な概念ですから、よく覚えておいてください。

 

整理すると、人は稼いだお金の一定数を消費し、残りを貯蓄します。

 

貯蓄されたお金もいろいろな所を経由して世の中を回りますが、

最終的には貯蓄されたお金は銀行経由で投資に回されることになります。

 

投資されたお金は、新しく工場や店舗を作るために使われ、

将来的にはそれが新しい製品やサービスを生み出すことになります。

 

消費だけでは経済活動を維持できませんし、投資だけでは、

日常的に必要な商品やサービスを手に入れることはできません。

消費と投資のバランスによって経済は成り立っているのです。

成長途上の国は投資の比率が高い

もし消費者が稼いだお金の多くを消費に回してしまうと、

その国の経済全体において、将来、生産を行うための投資がおろそかになってしまいます。

しかし、消費に対する支出が少ないと、豊かな生活を送るための製品やサービスが生まれてきません。

 

消費と投資がどの程度のバランスになっていればよいのかは、その国が置かれている環境によって異なります。

 

成長途上の国は、国民が豊かな消費生活を送るだけの余裕がありませんから、

稼いだお金の多くが貯蓄を通じて投資に回り、生産の拡大に費やされます。

 

例えば、貧しい途上国が工業化に成功して、企業が海外から多くの対価を受け取ると、

たいていの場合、その資金は生産設備の拡大に回されます。

 

さらに生産が拡大して業績が拡大すれば、より多くの対価を受け取ることができますから、

再投資の金額も大きくなってきます。

 

しかし設備投資に回されたお金は、最終的には労働者の所得となり、

家計収入の増大につながりますから、徐々に家計は豊かになり、多くの金額を消費できるようになります。

家計が多くを消費できると、それに対応した製品やサービスが登場してきますから、

社会は徐々に豊かになっていきます。

 

しかしながら、成長途上の国の場合には、消費よりも投資が優先されますから、

投資の割合が高いという状況がしばらく続くことになります。

豊かな消費型経済に移行できた国は強い

高度成長期の日本や数年前の中国は消費よりも投資が活発でした。

中国では全体の経済活動のうち約4割が設備投資であり、消費とほぼ同じ割合です。

今の日本は投資の割合は25%程度、消費の割合が60%程度ですが、

1970年代の日本は、中国と同様、投資の割合は4割近くありました。

 

一方、社会の成熟化が進んだ国では、消費の割合が高くなる傾向があり、米国では7割にも達します。

 

投資ではなく消費を拡大させることで経済成長を実現することを内需拡大と呼びます。

消費というのは、そう簡単に減るものではありませんから、内需拡大による成長モデルを実現できれば、

安定的に豊かな経済を謳歌できます。

 

しかし内需を拡大させるためには、コンテンツなど形のないものに高い付加価値を付け、

それに対して、多くの人がお金を支出する必要がありますから、社会そのものが豊かでなければいけません。

また国民の意識の持ち方も影響してくるでしょう。

 

日本では1980年代から、内需拡大による消費経済への移行が模索されましたが、

なかなかうまくいきませんでした。数字上は製造業が経済に占める割合は減っていますが、

付加価値の高い、豊かな消費経済が実現できているのかというと、残念ながらそうではありません。

 

日本が今後も、先進国としての地位を維持できるのかは、内需拡大型の経済システムを構築できるのかにかかっています。