安易な財政出動には弊害とは

安易な財政出動には弊害とは

経済全体の動きを理解するためには、

消費と投資に加えて、政府支出についても視野に入れて考える必要があります。

 

現在、日本の政府支出は年間約100兆円といわれています。

設備投資とほぼ同じ水準ですから、景気に対してかなりの影響があります。

 

日本の政府支出の最大の特徴は恣意的に増減できるという点です。

消費や投資は、基本的に家計や企業の意思の総体としてその支出水準が決定していくため、

全員が望むようにコントロールするのは不可能に近いといえます。

 

消費が減速・低迷し、設備投資が伸びていないことは多くの人が認識しています。

だからといって消費や投資を伸ばそうといっても、日本国民全員がそのように動けるわけではありません。

 

例えば経済団体の幹部は、

「最近の日本経済は設備投資が伸びていないことが問題だ」などと発言しますが、

自身が経営する企業は、設備投資を絞っているのが現実です。

 

しかし政府支出であれば、

国会で予算の額を決めさえすれば、支出を拡大したり、縮小することが容易に実現することができます。

 

政府支出の拡大は、

景気対策としてよく活用されていますが、それは恣意的に金額を決めることができ、支出を容易に増やせるからなんです。

 

政府が支出を増やせば、

政府に対して製品やサービスを売った企業の従業員は所得が増えることから、消費も拡大していきます。

 

また、公共事業という形でインフラを整えていけば、それが新たな産業に結びつき、

公共事業に投資した以上の経済効果が得られる場合もあります(乗数効果)。

 

政府が支出を増やすことを財政出動といい、

景気対策として財政出動が多用されるのはこのような理由からです。


安易な財政出動には弊害がある

最大の問題は世の中のお金の流れを恣意的に変えてしまうことです。

 

政府支出の原資は国民から徴収した税金ですが、

もし余分な税金がなければ、家計は別のモノに支出していたはずであり、

これが新しい製品やサービスを生み出す原動力になっていた可能性があります。

 

財政出動の原資が国債でも結果は同じです。

国債によって調達される資金は、家計の貯蓄から充当されます。

 

本来は、そこではなく別の投資に回っていた可能性のあるお金ですから、

やはりお金の流れを変えてしまうことに変わりはありません。

 

もし政府が市場メカニズムよりも優秀で、もっとも効果的なお金の使い方を選択できるのであれば話は別ですが、

現実の政治にこうした機能を期待するのは困難でしょう。

 

政府が市場メカニズムよりも賢く支出できないという話は、学術的にもほぼ意見の一致が得られています。

日本はこれまで多くの公共事業を行ってきましたが、

全国に誰も使っていない橋や道路がたくさんあることは多くの人が認識していると思います。

 

GDPの定義上は、政府支出を行えば、それがどのような内容でも、その分だけはGDPは増えます。

 

しかし、それが経済成長に対してほとんど効果を発揮していないというケースはザラにあります。

政府支出というものは、基本的に抑制的である方が望ましいといえるでしょう。

 

これらはすべてお金を支出する側に着目したものです。

しかしながら、お金を支出した家計や企業、あるいは政府が存在するなら、

そのお金を受け取った家計や企業も当然存在するはずです。

GDPが意味する、支出面/分配面/生産面

家計が支出したお金は、通常、企業が製品やサービスの対価として受け取り、

そのお金は従業員への賃金という形で支払われ、最終的に家計に戻っていきます。

 

企業は一部を利益として留保しますが、このお金は銀行に預金されますから、そこから別の投資に回っていきます。

 

企業が製品の仕入れや経費として支払ったお金や、政府が支払ったお金も同じです。

いろいろなところを経由しながら、最終的には賃金という形で家計に戻ってきます。

 

このほか企業は、利益の一部を配当という形でも還元します。

企業に投資をしているのは最終的には個人(家計)ですから、賃金と同様、これも家計に戻ってくる結果となります。

 

すべてをトータルすると、お金を支出した人と、お金を受け取った人は、全員同じ人たちということになります。

 

これらは、

同じ経済活動を、お金を使う立場(支出面)

モノやサービスを提供する立場(生産面)

受け取った対価をもらう立場(分配面)

 

という別々の立場は、3つの面はすべて同じことを示していますから、

それぞれの数字は理論的には完全に一致するはずです。これをGDPの三面等価と呼びます。

 

どこを経由してお金が回ったのかは、次の消費に影響する

家計に対して製品やサービスを提供する側(生産面)から見ると、

GDPは各企業が生み出した付加価値の総和となります。

 

ある企業が100円で商品を仕入れ、150円で売った場合には、

その企業が生み出した付加価値は50円となります。

 

何もないところから50円の製品やサービスを生み出した場合には、

仕入れはゼロですから、この場合は、50円全額が付加価値です。

 

このようにしてすべての企業が生み出した付加価値を足し合わせると、GDPの金額と一致します。

 

お金を受け取る立場の人から見た場合(分配面)、GDPは賃金(GDPでは雇用者報酬と呼ぶ)と

企業の利益に相当する営業剰余に大別することができます(残りは減価償却となりますが、ここでは割愛します)。

 

営業剰余は最終的には利子や配当という形で家計に戻っていきます。

 

所得を得た家計は、これまで説明してきた通り、

一定割合を消費し、残りは貯蓄します。

貯蓄分は投資という形で支出されますから、これは支出面のGDPにつながるわけです。

 

通常、GDPについて議論する時には支出面に着目することがほとんどです。

GDPに関する報道も、基本的には消費、投資、政府支出が軸になっています。

 

しかし経済の状態がどうなっているのか、あるいは今後どうなるのかを考える時には、

別の面。特に分配面についても考えることが重要です。

 

なぜなら、どのようにお金が分配されたのかによって、次のお金の使い方が変わってくるからです。

 

例えば、企業の営業剰余の割合が高く、利子・配当で家計にお金が戻っているのであれば、

富裕層の消費が拡大しやすくなります。

 

一方、雇用者報酬の比率が上がっている場合には、中間層の消費が活発になるでしょう。